『有給物語』1日目・朝食

玄関のドアを開けると気圧差でコートの襟がバタついた。春の風は暖かくもあるがどこか余所余所しさを感じる。 エレベーター内に表示されている時間は8:00とあったが、手元のスマートウォッチが言うには8:04だった。間違った時間を告げるくらいなら表示されて…

「今日から先輩だな」と専務に言われたから四月一日は社会人記念日

社会人2年目になったので、社会人1年目の振り返りをする。 以下は箇条書きのメモをそのまま載せただけになる。 興味で近づくと酷い目に遭う。 仕事は楽しい。親友に「お前は仕事の話をしている時が一番目を輝かせている」と言われて何とも言えない気持ちにな…

『有給物語』1日目・出発

頭頂部に熱いシャワーを当てると、その温かさが徐々に全身に広がっていった。身体が外側からじんわりと温められているのがよく分かる。こんな具合に蛇口を捻ると人の温もりを浴びられたら気持ちいいのに。だが仮にそんな便利なサービスが生まれたとしても、…

『有給物語』前日,1日目・起床

「休暇ですか」 「そう。休暇を取れ。別にお前が何か悪いことをしたから謹慎処分を下すとか、そういった類の話ではい。法律で定められた最低限の有給を取れと言っているだけなんだ」 いつも僕と話す時に柔らかな表情をしている上司が珍しく緊張した面持ちで…

僕の人生の目標

二度目の五輪が開会する筈だった日の東京は土砂降りだった。こんな天気では、開催なんてどの道無理だったのかもしれない。そう言わんばかりの激しい雨だった。僕はJR東京駅構内で買ったホットコーヒーを静かに啜りながら丸の内の疎らな人々の往来を眺めてい…

7月9日の夜

「あなたって美味しい水出し珈琲みたいな人ですね」御手洗から戻ってくると、彼女は窓の外を眺めながら呟いた。「アイスコーヒーでは無いの。水出し特有の一口目の冷涼感。飲み進めていくと温められて本来の味が滲み出てくる。」初対面の人にこんな事を言わ…

5月9日の夕方、2作目の産声を聴きながら

外出自粛と言われてから何週間が過ぎただろうか。あっという間に「命を守るStay Home週間」をも超えてしまった。会社からは5月末までは自宅研修という形が取られると言われた。念願叶って社会人になったのに、この調子では先が思いやられる。平日は業務とい…

4月最後の週末、もしくは外出自粛要請から5週目の週末

COVID-19が東京で本格的に流行し、都知事による感染爆発を抑えるための外出自粛が呼びかけられてから5度目の週末を迎えた。都心で生活を始めたにもかかわらず、学生時代に住んでいた街よりも人通りが少ない。NTTやGoogleによるスマホの移動形跡の統計によれ…

3月31日、そして学生生活最後の記事

日付が変わるまで時間がないので一気に書き上げる。大学生最後の1ヶ月は本当にあっという間に過ぎていった。引越しに始まり、毎日の自炊における悪戦苦闘、そして4月から働く為の準備。そんなこんなをしていたらお次はコロナウィルスまで来た。 さて、今日と…

2019年3月5日、そして2020年3月5日の話

昨晩は夜中まで引越しの準備をしていたせいで起きたのは11時過ぎた頃だった。強い疲労感を連れて起きた僕はベッドで横になったまま片目でスマホの画面を覗き込みメールを確認していた。すると、はてなブログから「このブログを開設してから1年が経った」とい…

2月11日と12日の夕方、あるいは2014年3月13日の夜の話

百貨店のヴァレンタインイベントで働いている。皆様信じられないほど沢山の高級チョコレートを購入していく。具体的な金額を言える訳がないが、それはもう経済の回る音がするような規模である。 このバイトにおいて男性スタッフは少ない。そもそも百貨店にお…

2月7日昼の話

ひょんな事から百貨店で短期バイトをしている。昔何かで観たのだが、中南米やアフリカでカカオを取る現地の人たちはチョコレートという食べ物を知らないらしい。まして彼らは女性が意中の男性に気持ちを(間接的に)伝えるという何とも奥ゆかしい行事に加担…

2月5日深夜の日常会話

先日、親友とボイスチャットを繋ぎながらゲームをしていたところ「お前って子供嫌いだけれど、教育に関しては子供が好きだよな」と言われた。 なるほど、確かにそうかもしれない。そんな事を一度も考えたことがなかった。画面内に多量の銃弾が飛び交い、至る…

[未完]Instagramという名のパノプティコン

〈これは昨年の十月に書き始めて完成していないものである。これから加筆修正する可能性もある。〉 ここ数ヶ月にわたり、収入が増えている。そして、とある理由により、更に収入が増えようとしている。これ以上働いても仕方ないと思うのだが、その一方で労働…

2019年 回想

今年も残すところ1週間くらいしかない。 過去は振り返らない性格であるが、一年に一度くらいはしても良いのではないかと思い記事を書いている。 今年あった大きなイベントといえば、やはり就職活動だろう。結果的に第一志望の企業から内定が頂けたのは僕の完…

サンリオ・ピューロランド探訪記 〜白猫のイデオロギー〜

就活が終わってからというもの、私が日々の娯楽に求めることは「東京に住む私文大学生っぽい」ことをする事である。残された時間は少ない。社会人になったら出来ない、時間的にやれないことをトコトンやろうと決めているのだ。このような事は一般的には意識…

新海誠の限界点/『天気の子』の感想

以下の『天気の子』の感想は、Filmarksの私が持つアカウントで既にアップされたレビューとほぼ同じものであるが、決して盗作ではなく、私が書いたものであると説明しておく。念のため。なお、批評が若干の口語調で書かれている理由は私の友人にLINEで映画の…

タピオカ狂想曲 〜踊る阿呆に見る阿呆〜

このブログを読まれていらっしゃるナウでヤングな皆様におかれましては、巷で「タピる」という行為が流行している事はご存知であろうか。 「タピる」とは、タピオカジュースを飲む行為を指す現代語である。今年の春ごろから近場にタピオカジュースを提供する…

東京03

月曜日は朝から電話が鳴り続いた。 僕の携帯に電話をしてくる人は限られているし、大体の人がLINE電話を使うので着信画面で誰が電話をしているのか分かるのだが、先日の電話はどれも登録されていない番号で03から始まる番号である。 まず朝8:30に電話がかか…

大学生の恋愛と就活の意外な共通点

就職活動を始めてみると、毎日があっという間に過ぎて行く。1年後には恐らくどこかしらの会社に所属して、月曜から金曜までの間を働くことになるのだろう。そして毎月20万円近くが銀行に払い込まれ、そこから家賃・光熱費・食費・奨学金の返済などを行わなけ…

僕と英語の関係性

ここ数日ブログの更新ができなかったのは現実世界が忙しかったのもあるが、基本的には筆が乗らなかった為である。僕の隣人は、ほぼ毎日ブログを更新している。どれだけ短くても続けようとするのは凄いことだと思う。僕の場合は、写真であろうと文章であろう…

なぜ僕は(原則)傘をささないのかについて

僕は友人と言える関係性の人が少ないが、引き篭もっているわけではないので仕事の同僚はいる。彼らは仕事の帰りや休憩時に僕と外を歩くと一度は困惑するらしい。その理由はタイトルにもある通り、僕が傘をささないからである。まるで傘をささない人は文明人…

初めてGUで買い物をした話

今日までGUは存在を知りながらも一度も使ったことのないブランドだった。佐藤可士和がロゴをデザインした事。ファーストリテイリングが持つ会社であること。会社を取り巻く事は知っていても、肝心の服がどんなもので質が如何なるものかは全く知らないのだ。…

ブログの開設

僕の中でブログ熱は、突然のようにやってきて、また突然去って行く。頭が直感的に「今は多くのことが進んでおり、これらを自身の物語として記録すべき」と思うときにブログを書きたいと思うのであろう。いつまでブログを書きたいと思いつづけられるかは分か…