2月5日深夜の日常会話

先日、親友とボイスチャットを繋ぎながらゲームをしていたところ「お前って子供嫌いだけれど、教育に関しては子供が好きだよな」と言われた。

なるほど、確かにそうかもしれない。そんな事を一度も考えたことがなかった。画面内に多量の銃弾が飛び交い、至るところから爆弾が炸裂する音が聞こえる中で僕は彼に対して「ポケモン的な感覚なのかな。個体値に合わせトレーニングで強化して、それを戦わせて勝たせる快感」と早口で応えた。

遮蔽物の端から頭を出した敵に至近距離から散弾を浴びせる。ボットなのか生身の人間が操るアバターなのか判別の付かない敵が死んだ。

一息ついてから「仮にそれを自分の子供に強いるとすれば、彼らは酷く窮屈な人生を送る事になるだろうから気をつけないとな」と付け加えた。

すると彼は短く「うん」と呟いた。

100m先に建築物を作ってこちらの様子を伺っている敵がいた。スコープで覗き込み、相手の動きを予測しながら発砲した。発射から着弾まで1.5秒近いラグがあり、敵はその間に頭を引っ込めてそそくさと逃げてしまった。

その敵を追いかけるように全速力で走りながら、さっきの話の続きをした。「僕は出来ることなら勉強以外の才能を見つけて育ててあげたい。勉強が出来たって上には幾らでもいる。優位性を保つ為には何かの才能プラス勉強だと思うんだ。実際のところMARCH以上の推薦試験ってそういう感じだろ」

「確かにな。でも俺はそんな事よりも何よりも真っ当に生きてほしいな」

坂を登り終えて小高い丘の上に着いた。先程殺し損ねた敵が背中丸出しで逃げている。

「『真っ当』か。それを教育するのは本来であれば家庭内であるはずなのに、多くの親は公教育に依存していると思わないか?」

「うん。これは無理もない事だろう。大学進学率が50%だろ。って事は半分の人は高校までしか行かずに働いている。それに対して子供の面倒を見る教師は最低でも4年制大学は出ている訳で。教育に携わっているんだから素晴らしい人間という前提で任せているんだろうな」

「とりあえず教師に対する神聖性を捨てるところから始めてもらいたいね。そもそも教師のセクハラ、体罰援助交際なんて幾らでもある現実から分かるだろ」

「それが分からないから問題解決しないんだよ」

僕は再びライフルのスコープを覗く、今度は直線的な移動しかしていないから狙いやすい。落ち着いて狙ってからトリガーを引いた。命中。敵は4次元から現れた謎の銀色の円盤に回収された。

「なるほどね」